京セラ株式会社

現在の活動内容を教えてください。

京セラの宇宙事業について過去からさかのぼると、JAXAやNASAのロケット、人工衛星、宇宙探査機などに搭載されるセラミック部品や機器を提供させていただいております。有名なところでは「はやぶさ2号」に搭載されたリチウムイオン電池用端子があります。更に遡ると、衛星通信携帯電話イリジウムの通信端末を開発・製造していたという経緯があります。これ以外にも、宇宙ビジネスに関連する多様なセラミック部品、デバイス、機器、システムにおいて、京セラ独自の技術群を保有しております。

2018年より既存の技術群をベースとした民間宇宙ビジネスの探索を開始し、現在は株式会社アクセルスペースと小型人工衛星に関連する新規事業を模索しています。2020年12月には、アクセルスペース様、オーシャンアイズ様と共に衛星データを利用した「高精度漁場予測に関する研究」をスタートしました。その他にも、人工衛星の製作に必要な部品やシステムの提供などハードウェアの研究開発プロジェクトも進行中です。

SPACETIDE に協賛いただいてから今年で3年目になりますが、これまでの3年を振り返ってどのような変化がありましたか。

この3年間で一番大きな変化は、京セラとして目指すべき方向が定まったということです。

SPACETIDEに協賛をした当初は、実はここまで真剣に宇宙ビジネスに取り組むことになるとは思っていませんでした。
京セラが「宇宙ビジネス」を目指すことにした一番の理由は、「社員のモチベーション向上」であり、具体的にどれくらい宇宙ビジネスに注力をするかは未知数でした。

 しかしSPACETIDEに協賛し、その後もさまざまな方とお会いしプロジェクトを進める中で、本気で取り組むべき領域が明確になりました。

―本気で取り組むべき領域とは。

次世代衛星通信を支えるハードウェア事業です。

衛星通信と聞くと、スペースX社の衛星コンステレーション計画「スターリンク」などをイメージする方が多いと思います。
そして、その領域はスペースXにすべて任せておけばいいのではないか、そう考える方もいらっしゃるかと思います。 

しかし、近い将来そういった衛星コンステレーション計画にもたくさんの課題が顕在化してくるタイミングが来ると考えています。
その際に京セラが持つ技術力や独自性のある強みを発揮し、計画を支援していくことができるのではないかと思っています。

現状は、京セラは衛星部品や機器の開発や地上システムの構築などに強みを持っています。
しかし、世界中で宇宙ビジネスが加速する中、新しいプレイヤーが日増しに技術力をつけている状況であり、悠長に構えている余裕は全くありません。

衛星コンステレーション計画が進行する中で、京セラがその市場でどのような立ち位置をとることができるかをイメージしながら、スピード感をもってこの領域に注力していく予定です。

SPACETIDE 2021Winterのタグラインが前回に引き続き「宇宙ビジネス、事業化ステージの始まり」となります。「事業化ステージ」に向けて今後の展望を教えてください。

―衛星コンステレーション計画で京セラが部品や機器を提供している状態が100点満点だとすると、現状は何点くらいの位置にいると考えていますか。

現在は10点くらいだと思います。

この点数をつけた理由としては、先ほど申し上げたように会社としてこの分野に注力するという明確な目標が定まったこと。そして一緒にプロジェクトを進めるパートナーが見つかったことが評価できると思ったからです。

―100点を目指すために、どのようなステップを考えていますか。

まずは事業のターゲットとなる顧客を見つける必要があります。
規模自体は小さくても良いのですが、将来のターゲットとなる顧客を見つけることができるか、それが非常に重要だと考えています。

ターゲットとなる顧客を見つけるまでは、技術の研究をしているだけになってしまいビジネスとして次のステップに進むことができないため最重要課題と捉えています。 

その後は顧客と向き合う中で必要な技術アセットを明確化し、それを一つずつクリアしていきます。

そして実際に宇宙に打ち上げてみて、実証実験を行うところまでで70点くらいに到達することができると思います。

残りの30点は、実際に打ち上げてから次の課題が明確になってくると思います。

―最重要課題である顧客を見つけるために今行っていることはありますか。

一つは、衛星通信関連企業の方に対して提案活動を計画しています。
SPACETIDEのような発信する機会を活用して、京セラのこれからやろうとしていることを発信することで人と繋がったり、既存事業の宇宙関連部門に紹介をしたりしてもらいながら接点を増やし、同時に提案を行って参ります。

もう一つは宇宙での利用実績を積むことです。
顧客に宇宙部品や機器を導入いただくには、宇宙空間での利用実績があるかどうかが非常に重要になってきます。 

これまでも会社として宇宙部品や機器の開発実績こそ持っていますが、それはあくまで発注を受けたものを決まった仕様で開発したもので、どの部品や機器が宇宙空間で使えるのかといった自社製品を起点とした実験を行う機会はなく、実績を積めていない状況でした。
今回出資をしたアクセルスペース社とは、従来の受発注の関係(上下関係がある関係)ではなく、対等なパートナーとして実証実験を行いながら共に成長していければと考えています。

SPACETIDEに協賛を決めた理由を教えてください。

前回同様、SPACETIDEのように熱い思いを持った方々と一緒に宇宙コミュニティを盛り上げていきたいと思ったからです。

また今年はそれ以外にも、海外に向けて「京セラは今こんなことを考えている」ということをPRする場としても活用したいと考えています。

参加者の方へメッセージをお願いします。

これまで衛星通信の支援が京セラの目指す方向性と言ってきましたが、それ以外でも宇宙ビジネスを進めるために研究開発を重ねてまいりました。

今年の展示ブースは「誰もやらないことをやろう」をコンセプトに決めました。

京セラの技術によって具体的にどんな宇宙ビジネスに貢献していくのか、これまで宇宙ビジネスを目指すにあたりどのようなチャレンジをしてきたのかをストーリーとしてご説明をさせていただく予定です。 

宇宙は「まだ誰もやったことのないこと」に満ちています。私たちと一緒に宇宙ビジネスを開拓していきませんか?